地獄化プロジェクトを脱出する

この記事について

着目する問題:
ビジネスプロジェクトの「地獄化」

プロジェクトの「地獄化」を、経験したことはありますか。私はあります。

プロジェクトの地獄化には、いくつかのパターンがあります。ぱっと思いつくものだと、こんな感じでしょうか。

不具合・クレーム・修正の無限ループ
「ちょっとした言葉のアヤ」のつもりが、想定外のおおごとに
果てしなく長く直列する伝言ゲームが複雑すぎて、もはや誰にも解けない

あんまり続けると、気持ちが暗くなってしまいそうなので、このあたりで止めておきましょう。

「地獄化」の根本原因はどこにある?

地獄化したプロジェクトは、まさに生き地獄。本当に、辛いものです。

では、なぜ、プロジェクトの地獄化は起きるのでしょうか?

結論から言えば、地獄化するプロジェクトの根本原因は「構想がダメだから」ということに、尽きるのです。

そもそもプロジェクトとは、

という構文で構想されるわけですが、このP、S、R、M、T、Fの間に適切な関係性があれば、どんなに規模が大きい取り組みでも、そこまで大きく荒れるということはありません。

しかし、いまどきは経済・経営環境の変化も激しく、技術も新しいものが次々と発生しているため、この「P、S、R、M、T、F」を適切に設定すること自体が、そもそも極めて困難です。

未知なるプロジェクト活動は、膨大なる「にわとり・たまご問題」の絡まり合い
「プロジェクト進行スキルを組織的に底上げする方法を検討するためのディスカッション・ペーパー」より

ゆえに、最初はどうしても、この構想「P、S、R、M、T、F」は、経営意思決定者が「えいやっ」と決めるしかないのですが、その筋がよろしくないことが非常に多い。筋がよろしくないことは大きな問題ではなく、適宜柔軟に軌道修正していけばよいのですが、実は、この軌道修正が、難しいのが、最大の、悩みのタネなのです。

長期的に考えた場合の理想の行動

・構想「P、S、R、M、T、F」が、おかしいなと思ったら、その都度、しっかり話し合う

ということなのですが、短期的な現実解として

・発注側:丸投げできる業者の営業に、難しいところは振って済ませる
・受注側:忙しいし、スケジュールもあるし、とりあえず問題をあいまいにして契約を進める
・社内コミュニケーション:お金の論理、組織の論理で、無理やりやらせる

という行動が選ばれがちです。

短期的に楽な道を選ぶと、そこがまさしく、地獄化プロジェクトの三丁目・・・というわけです。

脱出するためのアプローチは4通り

基本的に、どんなプロジェクトも、構想がダメなうちは、絶対に、うまくいきません。

ダメな構想に巻き込まれたら、対応方法は大きく4つあります。

もっとも達成感があり、自己成長にも繋がり、知見やノウハウ、信用力を獲得できる道は、「甲」です。

ただし、大変です。自分の能力や投下資源が不足しているのに、過大な状況に挑んでしまうと、健康を害する可能性も、なくはありません。

ゆえに、生きていくための実践的な知恵として「乙」「丙」の選択肢も、あることは認識していて損はありません

「丁」はさすがに最後の最後、という手段ですが、たった一度の人生、なんだかんだいって、命あってのものだねです。ですから、状況によっては、最善手となり得ます。ただ、プロフェッショナルは「乙」か「丙」の道を選びます。選べるように、常に注意を配るようにします。

プロジェクト構想を立て直すヒントは、将棋棋士のプレイスタイルにあり!?

最後に、ちょっと唐突感があるかもしれませんが、こうしたプロジェクトの生き残り術を考えるうえで、特に上記の「甲」の道を行くために、将棋用語が参考になるので、ご紹介です。

たとえば、将棋には「序盤」「中盤」「終盤」という言葉がありますが、プロジェクトワークでいえば「座組み作り」「実行開始」「最後の追い込み」といった概念に対応します。そして、各フェーズにおける「将棋のキーフレーズ」は、「プロジェクトの状況認識」に、非常に符号するのです。

さらに参考にしたいのが、往年の名棋士のプレイスタイル、異名です

プロジェクトワークを考えるうえで、ぜひとも知っていただきたいのが「光速流」「泥沼流」の二つですが、それ以外にも「自然流」「鉄板流」など、味わい深いプレイスタイルの言葉があります。

ポイントは、将棋の歴史に残るような目覚ましい成果を挙げた棋士は、自分のプレイスタイルを築き上げた、ということです。将棋の勝ち方がひと通りではないように、プロジェクトワークへの向き合い方も、実は、多様である。自分なりの道を探し、選べばよい。

プロジェクトの「地獄」に迷い込んだ人は、ぜひ、そのことを、意識してみていただけると幸いです。

参考資料と、PM育成よもやま相談会のご案内

ゴトーラボでは、企業の組織的プロジェクト進行能力を高めるための「ディスカッション・ペーパー」を一般公開しています。ぜひ、ご参考ください。

「プロジェクト進行スキルを組織的に底上げする方法を検討するためのディスカッション・ペーパー」https://docs.google.com/presentation/d/1GoFA2VqhkRNuFl0eKlcW0Hh4iFKOrZ3_0d3ggAsvHTM/edit?usp=sharing
(googleスライドです)

また、社員のPMスキル向上を、本気で考えたい!という方への、よもやま相談会を定期的に実施しています
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実は、プロジェクトの立て直しを難しくする最大の問題は、この構想「P、S、R、M、T、F」の修正について話し合う当事者「S」が、構想のうちに含まれてしまっている、ということです。ここでは「自分たちを取り巻くものについて、内部的な当事者がメタ的に話し合う」という、実は極めて厄介なことが起きています。

実は、筆者らが提唱しているプ譜の最大の効用は、この「メタな視点でプロジェクトを客観的に記述する」というところにあります。よろしければ、以下の記事も、ぜひ、ご覧ください。

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