【お客様】
株式会社ベネッセコーポレーション
校外学習カンパニー 指導開発セクター
【部門ミッション】
子供達の学習に携わる人(赤ペン先生や進研ゼミ経験のある大学生等)やデジタル学習等の強化・開発の推進
【ワークショップのご依頼の背景】
・事業のオンライン化、環境変化
⇒教育提供において、オンライン対応への需要が急速に増加
⇒スピードの重要性:お客様の環境変化がはやい
⇒年間計画→実施→振り返りという従来のあり方からの変革が必要
・環境変化に対応するための組織再編
⇒いろんな価値観を持ち、各自でそれぞれ違うメインのミッションを持っている人が集合
⇒プロジェクト経験が豊富でなくても、ある日突然、「あなたがこのプロジェクトのリーダー」
⇒利害関係者が多く、意思決定プロセスも複雑なことが多い
【現場から挙がっていた課題の声】
●プロジェクトとしての仕事の進め方をどうしていけばいいのか分からない
●チームリーダーとしてマネジメントの仕方が分からない
【研修を実施するにあたっての目的】
よく言われるような正論のマネジメント手法ではなく、失敗を受け入れ学びながら前進させる、実践的なプロジェクト進行の「技術」を身につけたい
【実施にあたって大事にしたいポイント】
・関係者が多いなかでも、できるだけ混乱を発生させず、確実に各ミッションを前進させたい
・つい、遠慮してしまったり、つい、フォロワーに回ってしまうのではなく、積極的に行動が取れるようになりたい
・「会議=なんのためかわからない」ではなく、意味のある会議が行われるようになりたい
【実施概要】
・リアル&オンラインの併用型研修
・ワークショップによる各自のプロジェクト設計=考えていることの可視化
・受講人数:約100名
・リモートでワークをサポートするために、SharePointを活用しリアルタイムでファイル更新&モニタリングを実施
【受講者の声】
<とてもためになった>
●実務ですぐに実践できそうなワークをできて、とても有難かったです!どうしても業務に追われていると、自分の領域中心で考えてしまいがちなときがあるので、それぞれの人が求めていることを想像しながら、全体を俯瞰して考える癖を増やしていかないとと思いました。
●PJについて、これまではとりあえず目的に向かって動き出す…ということが多かったが、予め俯瞰で考える重要性(プ譜)を知り、とても納得できた。
●プロジェクトの進め方について迷っていたので、「プロジェクトとはうまくいかないものである」という導入にまず、救われました。そして目標や成果より「勝利条件」という考え方がすごく腑に落ち。自分やPJの勝利条件は何かを見つめることで、動きやすくなることを実感できました。
●さくさく進めてくださったので、考えやすかったです。
●付箋をPPT上で並べ替えるところがクリティカルで、おお!となりました。仕事の要素について、一旦現状の事務的な分類をとりはらって別の概念ごとに並べ替えることで見えてくる本質があるのだなと実感しました。
<まあためになった>
●目標や勝利条件が曖昧な状態のPJに役立つ思考整理やアプローチ方法ということで、特に変革期に役立つ内容だと思いました。
●「プ譜」は私自身にとってはまったく新しい学びでした。「そもそも思い通りにいかないもの」というところに立って進めていけばいいと思えば、気持ちもなえずに、挑戦できそうに思います。
<ためになった>
●プロジェクトのテーマ、実行項目を整理する方法論は役に立ちました。ただ、何を目的としているのかがわからなかったので、フォームを完成させることに意識がいき、選んだ題材も書きやすいものになっていました。ワーク後の後藤さんの説明で「テーマやどうすればいいか曖昧な時に、この方法が活用しやすい」といところが一番納得がいったので、もっとぼやっとした内容でワークをやってみればよかったなと思いました。
<あまりためにならなかった>
●フォーマットにそって整理はしたのですが、自分のやり方がよくなかったのか、実際の業務に役立ちそうなOUTPUTにならず、自分の課題に気づけなかった
【講義後の質疑応答】
Q1
PJを進める中で、あいまいな意思決定や仕様はできるだけ排除したくなりますが、その場合にすべきことはありますか?もしくは排除せずに進めるべきこともあるのでしょうか。
<回答>
あいまいな意思決定や仕様は、もちろん断固として排除すべきものだと、私も考えます。
ただし、複雑で未知な環境のプロジェクトだと、これが実に難しいものです。
意思決定については、例えば、こんなことが起きているのではないでしょうか。
・関係者との間で、そもそも、意思決定したいイシューが何なのかの認識が合わない
・問題が複雑にからみあっていて、どこからどの順番で決定するかの順序が難しい
・意思決定したはずのことが、予想外の事情が発生し、あとから覆ってしまう
意思決定を適切に進めるためには、私は以下のことを大事にしています。
1.意思決定すべきイシューが何なのかを整理し認識をあわせる、会議の「準備」に一番多くの時間を費やす
2.会議の場では意思決定に必要な人と情報を客観的かつ網羅的に揃えておき、スムーズに意思決定できるようにする
3.どのような状況で、どのような優先順位のもとで意思決定したかの記録を残す
4.意思決定の意図と違う、想定外の結果が発生したら、ギャップが小さなうちに1~3を繰り返す
仕様については、こんな苦労が多いことかと思います。
・仕様を厳密に決めたつもりだが、次の工程に進んだ後で、不備や不足が発覚し、手戻りしてしまう
・仕様書では記述する対象ではない要素が、実は大事だったりする
・どこまで厳密に仕様書を書くべきなのか、粒度や書きぶりの適切なラインを見極めるのが難しい
仕様の決定については、私は以下のことを大事にしています。
1.仕様書だけで意思疎通できるとは考えない
2.なぜその仕様にしたのかの意図や背景、上位要求についての情報をできるだけたくさん伝える
3.常に工程をスケジュールよりも「前倒し」で進めるようにして、仕様の不備を早めにキャッチできるように進行する
手前味噌になりますが、プ譜を活用いただけますと、こちらに書いたようなやりとりが楽にできるようになりますので、ぜひお試しいただけますと幸いです。
Q2
現状、オンライン会議やチャットなど、直接面と向かってコミュニケーションを取る機会が減っており、あいまいなやりとりも多いです。そういう状況でも円滑にコミュニケーションを取り、PJをうまく進める方法があれば教えてください。
<回答>
確かに、オンライン会議やチャットなど、対面でない方法でコミュニケーションをとると、表情や仕草、空気感や間合いなどの情報が得られないので、相手の姿勢やスタンス、心理的な状況がわかりにくく感じることが多いと思います。
ただ、よくよく思い出してみたら、対面でやれていた時代でも、その頃からそもそもプロジェクトにはあいまいさの問題はあったのでした。対処すべき方法も考え方も、オンラインでも、基本は変わらないものだと私は考えます。
つまり、Q1の回答で申し上げたように、以下のことを丁寧にやるのが大事ではないでしょうか。
・常に、機敏かつ適切に論点整理をするように気をつける
・記録を残し、関係各位の認識を一致させる努力をする
・意図や背景、上位要求についての情報を大切にする
・どの工程に置いても前倒しを心がけて、問題発見を迅速にする
オンラインにはオンラインなりのデメリットもありますが、個人的には、必ず全員に発言機会を促し、回していく、といった議事進行をすることで対面よりもかえってやりやすいなと感じることも多いです。
また、論点整理や司会進行においては、再び手前味噌になり恐縮ですが、プ譜を活用いただけますと、こちらに書いたようなやりとりが楽にできるようになりますので、ぜひお試しいただけますと幸いです。
Q3
成果物(ゴール)が目に見えるものの場合、PJメンバーのイメージが揃いやすいと思うのですが、可視化できないもの(「育成」や「意識改革」など)の場合、どのようにメンバーと目線合わせすべきでしょうか。
<回答>
一般的には、「育成」や「意識改革」などの具体的な物でない成果を目指す場合は、測定可能な指標を設定しよう、という話をすることが多いかと思います。もちろんそうするべきですが、測定可能な指標と概念的なゴールをうまく結びつけるのは難しいので、いざ具体的な話をしたときに「これって意味があるんだろうか?」ということになってしまう、なんてことも多いかと思います。
目に見えない、概念的な成果を生み出す場合にこそ、「中間目的」や「勝利条件」について、よくよく吟味し、共通の認識をつくるのが大切だと、私は考えます。
その成果は、なぜ生み出されるべきなのか。
それを成立させるためには、どのような要素を整える必要があるのか。
設定すべき本当の課題は何であり、どこにアプローチすると解決するのか。
最終的に、どのような条件が満たされたら、その成果は達成されたと判断できるのか。
これらは、木に喩えたら、企画を成立させるための、根っこや幹を見極めるための議論です。具体的な施策をどうするか、とか、結果の測定をどのようにするか、といった具体的な話は、枝葉です。具体的なだけに、議論もしやすいですし、つい、意識が向いてしまいますが、枝葉だけでは、実はなりません。
ちなみに、プ譜でいいますと、
根=廟算八要素
葉=施策
幹=中間目的
花=勝利条件
実=獲得目標
という関係性になります。