PM/PjM/PdM/PL/PMOの違いを解説!

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着目する問題:
PM/PjM/PdM/PL/PMOの違い

プロジェクトマネジメントという職能の重要性が社会一般にも広く認知されるようになりました。

言うまでもなく、それはとても良いことなのですが、しかし、プロジェクトマネジメントというものは、わかりそうでわからない、かなり曖昧な概念です。

ある文脈では、PMは、「プロジェクトの責任者」という、ポジションや役割の名称として理解されます。

別の文脈では「プロジェクトを推進、管理する」という、業務や行為として理解されることもあります。

その点があいまいであるゆえに、PM、PjM、PdM、PdM、PL、PMOと、気づけば概念が細分化し、実によくわからない状況が起きています。職業的なプロフェッショナルも、意外とこの点について、あまり深く内省するということはなく、意外と多くの人が、なんとなくのイメージで言葉を使い分けています。

しかし実は、これらの言葉のニュアンスと中身をしっかり理解することには、たくさんのメリットがあります。

「そういえば、PMとPLって、何が違うんだっけ?」
「PdMって結局のところ、どんな役割なの?」
と、ふと、そんな疑問が湧いた方は、是非、以下の内容をご参考いただけますと幸いです。

ポジションとしてのPMとはなにか

一般的な事業開発におけるプロジェクト組織では、PMのポジション・役割は、以下の表に示すようなものです。

プロジェクト組織の業務分掌例

プロジェクト組織には、かならず最終的な責任を負う意思決定者がいます。そうでなければ、プロジェクトは組成されません。通常、その人を、プロジェクト・オーナー(PO)と呼びます。

同時に、どんなプロジェクトでも、作り上げる成果物の仕様を明確にし、それを実現するための設計行為を行う、つまり、具現化をする人がいなければ、成り立ちません。それが「デザイナー」「エンジニア」です。

表のなかにある「UX」や「UI」等の用語から、IT開発(なかでもアジャイル開発的な世界観)を想起される方も多いかもしれませんが、体験設計、意匠設計、内部設計という役割分担は、ITやソフトウェアに限らず、広い分野に共通するものですし、昨今は一般用語としても広まっていますので、この言葉を用いています。

PMという役割の第一義的な意味は、この、意思決定者と実行者の間を取り持つ、というところにあります。つまり、実行計画を立案し、コミュニケーションをスムーズにさせ、こぼれたボールは広い、問題があったら率先して解決にあたる、ということです。

しかしそれはあくまで理想状態での話であり、実践的には、軸足や重心が随分と変わってきます。まさにその、軸足や重心の変化により、PM/PjM/PdM/PL/PMOと、名前が変化していきます。

ただそれらは、個別の場や文脈に依存していて、一般的に定義しようとしても、なかなか難しいものです。ですので、PMとはなんぞや、PjMとは、PdMとはなんぞや、PLは、PMOは??と、それ単体で、絶対的な意味を問うよりも、これらの言葉が、どのような場や文脈で用いられるか、どんなニュアンスの違いがあるのかに着目するのが、オススメです。

以下の表で、各概念の違いについて、説明します。

名称違い
一般的な事業会社での
PMとPLの違い
一般的な事業組織におけるPMは、管理、調整役の意味合いが強いです。

・PL:未知に一歩を踏み出し、開発、改善や変革を担うリーダー(上図のPOが近い)
・PM:リーダーを補佐するサポート、軍師役
SI受託開発での
PMとPLの違い
SI受託開発の文脈では、以下のニュアンスで理解されることが多いです。

・PM:開発の総責任者
・PL:モジュールや小区分ごとのパートリーダー
PMとPMOの違い大規模開発では、一人ではPMしきれないため、PMOという概念が発生しました。

・PM:開発の最高責任者
・PMO:PMの補佐役たち
主にSaaSやアプリでの
PjMとPdMの違い
PdMという言葉は、SaaSやアジャイル開発の登場により一躍脚光を浴びました。
こうした場では、以下のように用いられることが多いです。

・PdM:その製品(事業)の運営、拡張開発全体に対する総責任者
・PjM:個々の開発案件のパートリーダー

おなじ「プロジェクト・マネージャー」でも、業界やビジネスモデルが変わると、意味合いやポジションの高低が七変化します。

なんだかとっても、面白いと思いませんか?

ちなみに、上の表も、絶対の正解ではありません。会社や業界によるローカルルールもありますので、これが全て、ということではありません。

会社によっては「PMOとPdMが並び立って、対等な関係のもと協力しあう」といったこともあったりします。考えようによってはかなり摩訶不思議な話ですが、どの会社や組織にも、固有の事情や歴史のもとで、ポジション名が冠されていくものですし、深く話を聞いてみると、一見不思議でも、ある程度の合理性があったりします。

そうした話も頭の片隅に置いていただきつつ、おおむね、このように整理をしておけば、ニュアンスや立ち位置の違いがわかりやすいかと思います。

行為としてのPMに必要なスキルや知識、振る舞い

さて、ポジションとしてのPMには、先述の通り、業態や文脈によって多様性がありますが、行為としてのPM二必要な内的資源(知識、スキル、経験、所作)は、意外と共通している部分が多いものです。

①エンジニアリングに関するドメイン知識

これは実は、考えてみたらごく当たり前の話なのですが、行為としてのPMとは、専門知識を持った技術者を始めとする各利害関係者に、行動を促し、差配する、ということです。必ずしも、PMが技術者の代わりに技術を扱う必要はありませんが、知識や知見がないよりあったほうがいいのは、言うまでもありません。場合によっては、信用を得られず、PMとしての職責が果たせないこともあります。

ただし、一分野に対して狭く、ではなく、広く知っていること。そして、原理と仕組みの基本を理解していることが重要です。

以下は、IT開発のPMに必要な知識、知見の例です。

こうした技術的ドメイン知識は、当然ながら、機械なら機械、自動車なら自動車、建設なら建設、バイオならバイオと、分野によって異なります。

ちなみに、技術者であればPMができるかというと、そうでもありません。技術者とは、具体的にその設計課題に、答えを出す存在であり、PMは、そのプロセスを支援する、という関係性があります。ゆえに、PM特有の知識・スキルもまた求められます。

②狭義のプロジェクトマネジメントに関する知識

狭義のプロジェクトマネジメント知識は、ドメイン知識と双璧をなすものと言えます。

③利害関係・社内手続き、コミュニケーション

ある程度、②に含まれますが、特筆して重要なのは、コミュニケーションに関する知識やスキルです。

④ビジネススキル/マネジメント系知識

これもある程度、②に重なりますが、いわゆるMBAビジネス知識、スキルも、基本的なものは必要とされます。

⑤所作

以上に挙げた、言語化可能なハードスキルに加えて、無意識的な、所作、としか言いようのないものもあります。この所作こそが、PMとしての力の本質だったりもします。

所作には、日常習慣的なものと、問題発生時のような、非日常的なものがあります。

⑥基礎教養、リベラルアーツ

最後の最後、底力になるのが、リベラルアーツです。こうした人類や森羅万象への関心を持つことは、業務に直接関係しないように見えて、実は、PMという行為を支える土台となります。

PM概念別の、内的資源の優先順位

上記の内的資源は、PM概念によって、必要とされる領域が微妙に異なります。

代表的なロール別の色分けを、以下の表で示します。

領域事業開発
におけるPL
SI開発
におけるPM
PMOPdM
①技術的ドメイン知識★★★
②狭義のPM知識★★★★★★★★★★
③コミュニケーション★★★★★★★
④ビジネススキル★★★★★★★★
⑤所作★★★★★★★★★
⑥リベラルアーツ★★★★★

いかがだったでしょうか、具体的に考えていくと混乱しやすいPM概念について、参考になれば幸いです。

と、このように、考えてください。


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    この記事の著者

    後藤洋平,ポートレート

    プロジェクト進行支援家
    後藤洋平

    1982年生まれ、東京大学工学部システム創成学科卒。

    ものづくり、新規事業開発、組織開発、デジタル開発等、横断的な経験をもとに、何を・どこまで・どうやって実現するかが定めづらい、未知なる取り組みの進行手法を考える「プロジェクト工学」の構築に取り組んでいます。
    著書に「予定通り進まないプロジェクトの進め方(宣伝会議)」「”プロジェクト会議” 成功の技法(翔泳社)」等。