PM/PL育成における「アサイン」戦略

この記事について

着目する問題:
プロフェッショナルなPM/PLへの、遠く険しい道

当たり前の話ですが、一人の人間が、プロジェクトマネージャやプロジェクトリーダーとして成熟していくのは、一朝一夕のことではありません

数々の現場や状況を経験し、先輩後輩や顧客、パートナー企業など、仕事を通じて関わりを持った人の長所を真似たり、短所を見て我がふりを直したり。

一般論としての経営学、組織論、法律論などを学ぶことも大事です。かたやで、いわゆるドメイン知識と呼ばれるような、業界・職場固有の具体的な理解も欠かせません。ロジカルシンキングやクリティカルシンキングなどの、いわゆる思考力も磨かなければならず、超一流のPMやPMOを目指すとなると、一生かけて学び続けることすら必要です。

一方、目の前の困難なミッションをクリアしていくために、そんなに悠長なことは言っていられない。いまいるメンバー、メンツでなんとかしないといけない、というのも現実。

その理想と現実を結びつけるために考えたいキーワードが、「機会」の言葉です。

PM/PL能力開発は「機会」を中心にせよ

このコラムで、唯一覚えていただきたいのは、以下の図です。

PM/PLとして力を発揮するためには、当たり前ですが、スキルや知識、経験が必要です。それだけでなく、短い時間で外から姿や行動を観察するだけでは、なかなか見えてこない内在的な資源を持っています。これらに加え、実績や信用力、人間関係や人脈といった社会的資源を有していて、ゆえにこそPMとしての力を発揮することができます。

ただし、それらの資源は、ただ持っているだけでは、宝の持ち腐れ。その人が有する内的・社会的資源を、まさに発揮するための機会(つまり業務やミッション、立場)与えられて、初めて力が花開くものです。

では、機会が生じる源泉とは、どこにあるのか。

所属している企業やその顧客、あるいはそれらを取り巻く業界や社会に存在する、様々な課題こそが、機会の源泉です。

PMスキルを伸ばす「機会」との出会い方

その人が有する内的・社会的資源が、外部環境にある課題と、機会という形で結びつく。両者に釣り合いが取れていた場合に、その人の能力は余す所なく引き出され、それが成果として結実しながら、新たな資源の蓄積となっていく。

PM/PLとしての成長過程とは、こうした循環的なものです。

PM/PLとしての能力開発をしようと考えると、つい、スキルや知識を身につけなければならない、と、思ってしまいがちなところがあります。もちろん、そこも確かに大事ですが、そこが一番大事かというと、そんなことはありません。

大事なのは、その現場に立った当事者として、プロジェクト課題を適切に見出し、手を伸ばし、試行錯誤もしながら、その現場が求める答えを出すことなのです。

PM能力の本質とは、「その人が、過去、どれだけの真剣勝負の場で、答えを出してきたか」です。

そして、真に人が主体的に課題と関われるかどうかは、その人間の根底にある「内的動機」「原体験」「所作」こそがキーファクターとなっています。

上司ができる最大の育成施策は「アサインの工夫」

結局のところ、いくら座学や研修をやっても、PM/PL能力の育成には、役立ちません。

いや、ちょっと言い過ぎました。もちろん、スタートアップや伸び悩みなど、ステージに応じて、適切なコンテンツに出会うことで、次の一歩のヒントにはなりますし、長い人生のなかで、ときどき出会うヒントも、何かのきっかけになることは、あります。それは命題として真ではあります。

それも承知の上で申し上げたいのは、真剣勝負の場で、答えを出す」という経験は、それ自体が、まったく次元の異なる成長要因なのだ、ということです。

もちろん、その機会が、ハードルが高すぎて、本人が折れてしまっても困りますが、イージーモードでは、単に時間の浪費です。

では、どう考えればよいか。

ではなく

と、このように、考えてください。

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この記事の著者

後藤洋平,ポートレート

プロジェクト進行支援家
後藤洋平

1982年生まれ、東京大学工学部システム創成学科卒。

ものづくり、新規事業開発、組織開発、デジタル開発等、横断的な経験をもとに、何を・どこまで・どうやって実現するかが定めづらい、未知なる取り組みの進行手法を考える「プロジェクト工学」の構築に取り組んでいます。
著書に「予定通り進まないプロジェクトの進め方(宣伝会議)」「”プロジェクト会議” 成功の技法(翔泳社)」等。